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今年の夏は本当に酷暑で、6月後半から延々と続き、立秋を過ぎて台風のため、ようやくちょっと一息ついたものの、残暑はまだまだ続いています。でも、さすがに峠は越したという感じで、日暮れは確実に早くなっていますし、風もかすかに秋の気配を運んでくるようです。
この時期になると、暑い暑いといっていた頃がちょっと懐かしくなったり、行く夏を惜しむ気持ちも出てくるのが普通ですが、今年はあまりにも長すぎて暑すぎた夏、惜しむ気にもなれませんね~~それよりも、涼しくなっても体力気力が戻るのかどうか、あれこれ溜まった事も片付かないうちに秋も一瞬に過ぎて年末が来てしまうのではないか、という不安ばかりが募ります。

さて、『源太郎の初恋』文庫版所収で、はいくりんぐのお題にもなった『月夜の雁』の冒頭を見ると、この年の江戸の人々も、猛暑に悩まされ、秋が来てもなかなか体調が戻らなかったりしていたようですね。
で、この年から次の年明けにかけて、かわせみ大河の中で最も画期的な出来事、東吾さんおるいさんの祝言と並ぶ嬉しいことがあるわけですが、その始まりが『月夜の雁』の前の前の『笹舟流し』なのです。
もっともこの嬉しいニュースは、『笹舟流し』のラストシーンまで読者にも明らかにされず、むしろ不穏な雰囲気で始まります。例の東吾さんの、七重さん祝言の大雪の夜に「やってまった」問題が、ここに来て大変な結果を呼んでいたことがわかっちゃったのです。

かわせみシリーズは、雑誌連載時こそ前編・後編に分れることもあり、ある登場人物がだいぶ後になって再登場したりすることもありますが、基本的に各話は独立しています。ところが『笹舟流し』は例外的に、「日頃、楽天家であまり物事に拘泥しない神林東吾にしても、この問題は笑って忘れてしまうというものではなかった。」と、いきなり前を受けて始まっているんですね。単行本で読んでいる人はいいのですが、オール讀物をたまたまこの号だけ買った人は、「この問題って何だよ!!」とかなり気になったんじゃないでしょうか。まぁ数ページ後に、東吾さんが宗太郎さんに相談する形で、いちおう経緯を振り返っていますので、初めての読者も「ああそうだったのか」と腑に落ちるのは、平岩先生(それとも編集者?)の抜かりないところではありますが。

タイトルの「笹舟」は、この物語のミステリー部分となっている、記憶喪失の女性を巡る悪者退治の話の中で、女性が記憶を取り戻すきっかけとなる、夏らしい風情のあるものですが、読者の立場としては、事件はほとんどどうでもよくって(笑)、東吾さんと麻太郎くん、琴江さんはこれからどうなるのか、おるいさんにはバレずにすむのか、ハラハラが止まらないのですよね。そして最後の急展開で、東吾さんと一緒にびっくりぽん!・・・となりますが、中盤の作者が思わせぶりに書いていた所から、この展開を予想できちゃった読者も多いのかなあ?
私はこの文庫の巻末にある『立春大吉』がオール讀物に掲載された時に立ち読み(おいおい)して、その後文庫が出てから『笹舟流し』を読んだので、この展開はもうわかってましたが、できれば何も知らずに読んで、東吾さんといっしょにビックリしたかったです(^^♪

作者の腕の冴えているところは、東吾が「るい、るい、と大声で呼びながら部屋を出て」行きますが、その後のおるいさんとのやりとりは読者の想像にまかせ、東吾さんが行ってしまった後の宗太郎さんと嘉助さんの表情で物語を締めくくっている所です。舞台の演出家としても名を馳せておられた平岩先生の面目躍如。

嘉助さんの「ばれましたんで・・・」は、かわせみ全巻の中でも名セリフの一つですし、ぐずぐずと居残らずさっさと帰っていく宗太郎さんも江戸前の格好良さですね。

重箱の隅ですが、この『笹舟流し』では、麻太郎の誕生日が大晦日生れの花世ちゃんと一日違いの、12月30日となっています。これは麻太郎本人ではなく、琴江さん⇒七重さん⇒宗太郎さんという、かなりの伝言ゲームの結果ですが。
ところが、江戸編も終わりに近い『浮かれ黄蝶』の中で、麻太郎がかわせみに遊びに来ている時、おるいさんやお吉に、自分の誕生日は10月8日と伝えています。
七重さんと宗太郎さんの祝言『雪の夜ばなし』は、何月という記載はみつからないので、大雪というだけなら早春もありえますが、続く『鬼の面』が節分の話で江戸の節分はご存知のように年内ですから、麻生家祝言=東吾さんと琴江さんの事件は12月20日前後、そうなると麻太郎の父が東吾ならば、次の年の12月30日麻太郎誕生は完全にありえません。確実に大村殿の息子です。10月8日というのも現在の産科学的には遅すぎる感じですが・・・。
平岩先生のウッカリなのか、もしかしたら、琴江さんが東吾さんに疑念を抱かせないように嘘を言っていた可能性も高いですが、『笹舟流し』新装版ではもしかしたら「12月30日」が削除または改訂されているのかどうか、気になります。

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かわせみ談話室 2018 8月

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本当に今年の夏は暑かったですね!
先週は新潟でも40度超えを記録したかとおもうと、今週になると一転、連日雨…(しかも警報が出るレベル)
「ちょうどいい天気」があまりないなぁと思う今日この頃です。

『源太郎の初恋』の巻は、かわせみにとって重要なお話がいっぱい詰まっていますよね。琴江&麻太郎母子と東吾さんとの邂逅、るいさんの懐妊発覚、源太郎の初恋(未来のお嫁さん)、そして千春ちゃん誕生。

それらの名作も、もちろんいいですが、それらにあまりからんでこない「迷子の鶏」も好きです。「釣鐘泥棒」や「野良鶏」など、ちょっと笑える感じもするワード、そして事件解決のきっかけになる孫娘が、けなげで好きです。

麦わらぼうし  2018/08/31 (Fri.) 22:09 edit

まだまだ暑いですね~。
体力の消耗が激しくて、ただでさえなまくらなのに、ますますのらくら度がつのります。

あらあらもたもたしていたら日付が変わってしまいました。
「源太郎の初恋」はるいさんや東吾さんの運命が大きく動き出すお話が多くて、何度となく読み返す巻なのですが、麻太郎の誕生日は何となくすっきりしないままきちんと数えずに来ていました。たまこさまの今回の検証でちょっと納得するところもあり、なお謎も深まる気も(笑)

台風と酷暑と雷八月尽

はなはな  2018/09/01 (Sat.) 00:13 edit

この巻は、本当に好きなお話ばかりです。かわせみを取り巻く大事なお話も多いですしね。
誕生日の謎、改めて教えていただくと本当に謎ですね。
誕生日の謎がもし解けないままなら大村様のお子だという見方も出来ましたが、成長してからの浅君に東吾さんのおもかげを皆んなが見る…ということは、やっぱり東吾さんの子なんですよね。

毎日暑くて体力を削られるばかりでしたが、当地ではようやく落ち着いてきました。本日の予想気温は30度だと聞くとあぁ今日は涼しいわと思ったりします。

削られし気力体力八月尽

浅黄裏  2018/09/01 (Sat.) 00:26 edit

麦様、はなはな様、浅黄裏様、いつも有難うございます。

『迷子の鶏』私も好きです! とくに最初のほうはお吉さん無双というか、生きのいい魚は捌くなと言われた板前さんさぞ困惑だろうと可笑しいですし、鶏が(目の前で!)卵を生むシーンって、ぜったいお吉さん話を盛ってるだろ!とか、ツッコみながら読むのが楽しい。

麻くんの誕生日問題は、以前もご本家の掲示板で話題になったと思うのですが、明治編が始まる前はまだ作者の真意が100%明らかではなくて、結局大村殿の子ということになり、めでたく千春ちゃんとゴールイン・・・みたいな可能性も無きにしもあらずだったのが、明治編で完全に麻太郎=東吾の生まれかわりになってしまったのですよね~~それはそれでまぁ良いのですが、東吾さんには甘えん坊だったりヤンチャだったりする面もあったのに、麻太郎は完全無欠過ぎるのも、明治編が江戸編に比べて今ひとつの原因でしょうか。子供には厳しく接する親も、孫となると、欠点が目に入らず可愛い可愛いになってしまうという事はありがちですが、作者と登場人物の関係も、それに類する所があるのかなぁ・・・

ストファ管理人  2018/09/01 (Sat.) 08:38 edit

たまこさんのお説:「子にはヤンチャさせても孫にはさせられない、可愛さゆえに」というのは、説得力がありますね。孫にはいついつまでも品行方正であって欲しいと思うのかもしれません。
だから周りはみんな麻くんの顔や背格好や行動に東吾さんのあれやこれやを思い出してしまう描写が多いのかもしれません。

浅黄裏  2018/09/01 (Sat.) 14:25 edit