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殺人的酷暑が延々と続いたと思うと、月末になって台風に振り回された7月でした。
震災後、省エネ・節電の気運がしばらく高まっていたのもどこへやら、熱中症の怖さが喧伝されて、電車やビル内の冷房が最強になっているのは東京だけでしょうか? 内外の温度差というのもかなり身体にはストレスになりそうです。
こんな夏は、難しい仕事は出来るだけ先に延ばし、のんびりと読書、それもストーリーの複雑なものは、暑さでぼーっとした頭では追いかけきれないので、何度も読み返したおなじみの本を広げつつ、とろとろとうたた寝・・・という過ごし方が一番かも!

という訳で、かわせみ夏のお話もいろいろありますが、今月は『一両二分の女』を選んでみました。文庫版では9冊目、まさにシリーズも油がのってきたというあたりのお話ですね。
そして、おるいさんの朝シャンで始まるこのお話、かわせみファンなら「あぁ、あれね!」とニッコリ(ニタニタ、ニヤニヤ?)してしまう、官能系フルスロットルといいますか、ドラマについても「NHKでここまでやっていいんかい」みたいな感想で湧いていましたよね。
ドラマ化といえば、私の記憶ではこのお話、元祖(小野寺&真野コンビ)だけじゃないかと思うんですが、テレビ朝日版やNHKの高島さん版でもやってましたっけ?


このお話、二人のアツアツぶりだけでなく、本筋のミステリーのほうも、なかなか読みごたえのあるストーリー。陰惨な話といえばそうなんですが、まぁ被害者の男性たちに関しては、多少なりとも自己責任の部分もあるともいえます。
加害者の母と娘の方はどうですかねぇ。夫や親戚の男たちに裏切られだまされたとはいっても、「男が憎い。男ほど油断のならないものはない。」といって連続殺人に走るというのも、なにか短絡的に思えます。これだけ計画的に男たちを誘いこみ、だまして殺して金を奪う、というパワーとエネルギーがあるのだったら、それを母娘で必死にまっとうな商売で頑張るほうに向ければ、いくらでも人生の後半に幸せが巡ってきたのではないかと思えますが・・・

「お辰という女の住いはどこだ」
「谷中です。仏心寺という寺のすぐ裏だそうですが……」
その足で、東吾は長助と谷中へむかった。
谷中は寺ばかりというが、仏心寺もその一つで境内は狭いが、裏に墓地があり、その先には湯灌場まである。

慶長元年(1596)浅草馬道に草庵が建立され、慶安年間(1648〜52)に谷中の地に移転されました。
開山は本山・堺妙國寺初世佛心院日珖上人。
お祖師さまのお像は江戸時代の仏師について不明な点が多い中で「大仏師」と記載があり、歴史的に納主・彫師・開眼師が記名されている区内最古となるお像です。
堂内の毘沙門天様は江戸初期に紀州松平家から奉納されました。
                     (日蓮宗HPより)

もしかすると、古典芸能に詳しい平岩先生がこれを書かれた時、「黒塚(安達ヶ原)」や、「殺生石」などのイメージもその根底にあったかもしれませんが、「時代小説ではあるけれど描かれているのは現代の問題」であるかわせみシリーズ。お能ならば仏法によって成仏できるというラストになりますが、より社会的というか、生々しいディテールで迫ってきます。


この文庫に収載の話は、昭和60~61年に書かれたものですが、昭和60年という年は、風俗営業法が改正され、初めてテレクラが出来た年なんですね。
『一両二分の女』では、「安囲いの女」つまり吉原のような遊郭ではなく、素人の女性が風俗業を行うようになった変化が語られていますが、テレクラ等の匿名性が利用され、風俗業など縁のなかった層・若年層がそうした業界に取りこまれていった動きは、江戸末期も昭和末期も共通だったのかもしれません。平成に入り、ポケベル・携帯電話が発達すると「ダイヤルQ2」なるものができ、平成8年には「援助交際」が流行語大賞を受賞します。

この話のラストシーン、盛りの夏の暑さをものともせず、贅沢な衣裳を重ね着して刑場に引かれて行く母娘の姿が非常に印象的です。
このシーンは別になくても、事件が解決したところで終ってもストーリー的には問題ないのですが、このシーンがあることで、ぐっと物語にインパクトが加わりましたよね。
結局、この母娘の最終の目的は何だったのか、男への復讐だったのか、それとも奪った金での贅沢三昧だったのか。
現在大きな問題になっているMeTooなどにしても、単純に、男性=加害者、女性=被害者という図式だけでとらえていては解決できないのではないか、という気がします。
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かわせみ談話室 2018 7月

Comments

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コメント
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たまこ様、かわせみ談話室、今月もありがとうございます。
一両二分の女・・平岩先生の筆も元気ですね・・東吾さんも
るいさんも、そして源さんも・・若かったなぁ・・遠い目

生命とり生命つなぐ水よ文月尽

長い一か月でしたね・・前半の10日間は大雨、洪水、西日本一帯に
大きな被害と爪痕を残し、その後の20日間は、全くの日照り続き
最後には、迷走、逆走?台風までやってきて、被害に遭われた皆様へ
心からのお見舞いを申し上げます。
酷暑ばかりで、こちらの感覚もおかしくなってきて、35度以下の日
を涼しい?と思ってしまうほどです。
不調のエアコンも何とか復活してくれて、取り替えなく動いてくれて
有難いことです。水害に遭っていなくても、こう日照りばかりでは、
農作物被害もどんどん増えているようです。野菜もまた高くなります。
水はやはり大事で必要なものには違いないのですが・・

平成最後の夏、8月も長い一か月になるのかな

すみれ  2018/07/31 (Tue.) 20:43 edit

本当にすごい一か月でしたね。
新潟も先日39.5度を記録しました。酷暑の中、避難生活をおくっている方々を思えば、これぐらい我慢しなきゃと思いますが、やっぱり暑いです…

「一両二分の女」久しぶりに読み返してみましたが、やっぱり面白いですね!嘉助が「囲いもの」について鹿爪らしい言い方で説明する場面、好きです。
この母娘の心理はわかりかねるのですが、お金だけが目的ではないように思えます。亡くなった旦那よりも、その後に弟にされた仕打ちが相当ひどかったのでは…と、今回読み返してみて思いました。

麦わらぼうし  2018/07/31 (Tue.) 21:54 edit

すみれ様、麦様、いつも有難うございます。
昨年は、酷暑の時期も比較的短く、過ごしやすい夏だったのに比べると、本当に今年は耐え難いですね。
麦様もおっしゃっているように、ライフラインが普通に機能している所でも大変な暑さなのに、被災地ではどんなだろうと心が痛みます。
一方で、不可抗力的要素が大きい災害ではなく、ちょっとした配慮さえあれば防げた、小学生の熱中症死には、怒りを禁じ得ません。
せめて立秋の頃には、「普通の暑さ」までに収まってほしいと祈るばかり・・・

屋外へ 決死の覚悟 文月尽

ストファ管理人  2018/07/31 (Tue.) 22:50 edit

おるいさんの朝シャンシーン、懐かしく思い出しました。器用な気質で、自分で髪を結い上げてしまうおるいさんが結い直すために洗髪するんですよね。

クエン酸カリウム塩分文月尽

情念の世界から一気に不粋な句ですみません。去年体調を崩したのもこの頃だったなとこれも懐かしく思い出しました。皆さまもどうぞご自愛ください。

浅黄裏  2018/07/31 (Tue.) 23:55 edit