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今年のユネスコ記念能のテーマは「葵上」、そして仕舞も能のシテも全員、各流派の女性能楽師という点がユニークだ。囃子方でも小鼓・笛が女性。



仕舞 枕崎真由子【金春】 羽多野良子【金剛】 土屋周子【宝生】 大島衣恵【喜多】

タイトルは「葵上」だが葵上は登場せず、シンボル的な「出小袖」が舞台に置かれるのみで、シテは六条御息所。そのいわゆる「うわなり打ち」のサワリの部分が仕舞である。金春流だけは仕舞のタイトルが「枕ノ段」になっている。
シテの持つ扇は赤地に大輪の椿をあしらったもので(大輪の花であることはわかったが、牡丹かしら何だろうと思って、後で能装束の本を見たら椿だった)、鬼扇といわれるもの。「ひと皮剥いたら鬼」ということだそうだ。
 
「いやいかに思ふとも、今は打たではかなふまじと、枕に立ち寄りちやうと打てば・・・」
「今の恨みはありし報ひ 瞋恚のほぶらは身を焦がす 思ひ知らずや 思ひ知れ」
「恨めしの心や、あら恨めしの心や 人の恨みの深くして 憂き音に泣かせ給ふとも 生きてこの世にましまさば・・・」
「昔語になりぬれば なほも思ひは真澄鏡 その面影も恥づかしや 枕に立てる破れ車 うち乗せ隠れ行かうよ うち乗せ隠れ行かうよ」

 
狂言 因幡堂【和泉】 シテ(夫):深田博治 アド(妻):中村修一

能  葵上【観世】 シテ(六条御息所怨霊):鵜沢光 ツレ(照日巫女):多久島法子
          ワキ(横川小聖):則久英志  ワキツレ(廷臣):御厨誠吾
          アイ(従者):善竹大二郎

中入りはなく、シテは後見座で面を泥眼から般若に変えて、後半のワキの調伏との闘いになる。
 

解説の観世喜正先生によれば、現在1100人くらいの能楽師のうち、女性能楽師の割合というのは2割弱くらいだそうだ。1割もいないくらいかと思っていたので、意外だった。昨今の「女性の活躍する社会」ブームのもっと前、白洲正子さんの頃から、白洲さんのように有名ではなくても、能楽を志す女性たちは着実に地盤を築いてきたのですよというようなことを、やや自慢げにおっしゃっていた。

喜正先生おん自ら、入口で資料パンフなどを手渡しされていたので、驚いてしまった。淡交社の『演目別にみる能装束』(近くの図書館で、借りては返し、返しては借りでほぼ私物化している。買えよっつー話だが、この手の本ってAmazonのユーズドでも結構するので…)のお写真でおなじみの顔がヌーっと眼の前にあるんだもん。

まぁ能楽師っていうのは、他の芸能人に比べると、ずっと一般人に近い位置におられますよね。観客の多くは、私などと違ってちゃんと舞や謡のお稽古をしてらして、その日の舞台上にいる誰かが師匠で毎週じかにお付合いされているっていうケースも多いんだし、チケット申し込みを電話ですると、事務所とかでなく、そのお家の奥様やお母様らしい方がお出になることも多い。
野村四郎喜寿記念公演「安宅」のチケットを申し込んだ時は、本当に昔ながらのいいとこの奥様っていう感じのお声が出られて(まさか大師匠の奥様!?)、丁寧に受け答えして下さったが、こちらの住所を言うときに、◆◆区◇◇の後、〇の〇の〇(住所)の〇(部屋番号)と、貧乏臭く数字を4つ並べて言う所、2つ目で「はい、ではお電話番号を」と言われてしまい、昭和30年代くらいの渋谷や世田谷の住宅地の、〇丁目の〇、という住所を当然として暮らしておられるんだな~と思った。
お若い方でも、長山桂三さんの奥様(凛三くんママ)はいつも桂三さん出演の会には受付にお着物姿でいらっしゃるし(女優さんみたいに綺麗!)、凛三くん出演の会に休憩時間ロビーをウロチョロしている武田章志くんと馬野訓聡くんを見かけたこともある(洋服を着ていると、単につるんで歩いてる二人の小学生だ)。
お能の子方ちゃんたちは、容姿といい芸の確かさといい、大河ドラマの子役とかで世間に披露される機会があれば、もうホントにすごい人気を博すと思うのだが、一人前の能楽師になるには毎日毎日がお稽古で、土日はあっちこっちの公演に引っ張りだこみたいだし、とてもテレビなどに出ているヒマはないのだろう。

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第14回ユネスコ記念能(国立能楽堂)

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