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大河ドラマもあと数回を残すのみとなり、主人公も事実上、直虎から、徳川家における井伊直政(まだ万千代であるが)に移行した。
徳川といえば、なんといっても山岡荘八の17年に渡る執筆という、全26巻『徳川家康』…岡崎城には直筆を彫り込んだ石碑も建てられている。
とても通読する根気はないが、今年の大河ドラマに対応する部分だけ拾ってみようかと、最寄りの図書館に文庫が全巻そろっている(はっきり言ってほとんど貸し出されず、いつも全巻そろっている(^^;)のを幸い、ちょっとチェックしてみた。

井伊万千代登場は4巻の終わり近く。大河ドラマと違って、最初から虎松ではなく井伊万千代として登場する。もちろん小野玄番の息子とユニットを組んだりしてもいない。一人で家康に会いにやってきた万千代を見て、家康が感慨深く「するとおぬしは、この井伊谷の主であった直親どのの忘れ形見か」と言うシーンはあるが、次郎法師直虎や小野正次、万千代の生母については全く言及されないし、松下家はどうなっているのか、井伊家復活が成った時に万千代の名も家康から貰ったのではないかと思うのだが、そのへんはスルーになっている。まぁ徳川家康の全人生となると膨大な数の登場人物で、それぞれの親族背景まで細かくやってる余裕はないには違いないが。
家康がすぐに万千代を召し抱えた(もちろん、草履番とかはスルーですぐに小姓になったようだ)のは、井伊家も昔の松平家と同様に今川に苦しめられたことから、この名門の流浪の子を庇護することにより、井伊谷を中心とする奥浜名一帯の民心を味方につけようという目論見があったとしている。実際、その後の展開の中で、万千代が家康の側近くまめまめしく仕えている様子はたびたび登場する。

そして信康事件は、5巻から7巻にかけて、じっくりと描かれる。
先日のNHK-BS「英雄たちの選択」で、信康事件があまりにも好いタイミングで取り上げられ、信長によって武田内通の「疑いをかけられた」のではなく、岡崎の信康派は、はっきりと織田と縁を切って武田につくことを考えていたと言っていたが、ひょっとしてこれが大河ドラマの予告編かと思ったのだが、森下脚本ではこれをなぞらず、あくまでも織田信長を「魔王」イメージで描いていた(愛撫していた小鳥を次の瞬間、表情も変えずに狙って射落とすエビゾー様にクラクラした視聴者も多かったことだろう)。実際にはこの時点での信長は、そこまで無双ではなかったのではないかと、関東人としては、ここで徳川が織田と手を切って武田と和睦し、北条・上杉も含めた関東一大勢力を構成して天下を取ってほしかったが(幻の夢)。

山岡本の信康事件で何がすごいって、築山御前(瀬名)の憎まれ役ぶり描写が半端ない。
山岡本を通読する気にならない理由の一つは、長すぎることだけでなく、全開の昭和オジサン的女性観にウンザリすることもあるのだが、秀忠の生母となる西郷局お愛の良妻賢母ぶり(「八橋の杜若のような」と形容されている)、結城秀康を生むお万のエキセントリックさ、子は産まなかったが聡明で側室たちからも尊敬される有能な女性リーダー信長正室お濃など、多彩な女性群に対し、それらの美質を全く持たず、自己中で嫉妬深くプライド空回りの結果追い詰められていく築山御前が、結局すべてのインパクトを持っていってしまう描写力はすごい。
女性観の古さとストーリーテリングの手腕とは別物ってことですね(申し分ない価値観でありながら、つまんない小説というのも多々ありますからね)。

山岡本の家康は、1983年の大河ドラマを始め、何度も映像化されているが、なんといっても脳裡に焼き付いているのは扇千景さん(後の参議院議長!)の築山御前である。市川右太衛門・北大路欣也の父子出演で大きな人気を集めたこのドラマはNHKではなく、当時まだNETといっていた現在のTV朝日で、1964-65年の放映、まさに朝ドラ「ひよっこ」の時代で、家庭の録画など夢のまた夢、テレビ局にさえフィルムは全く残っていないというし、Wikiにも出ていない。当然、ごく一部しか見てはいないはずだが、その後多くの女優さんたちによって演じられてきたにもかかわらず、築山御前といえば扇千景以外の名が思い浮かばない。
ちなみに今回の菜々緒さんは、森下脚本のキャラ付けも全く違うこともあり、私の中では築山御前(扇千景)・瀬名(菜々緒)という、全くの別人になっている。
また山岡本では、築山殿の母が井伊家の女性であったことにも触れられておらず、瀬名は「今川太守の姪」となっているが詳しい姻戚関係はわからない。父の関口親永については比較的詳しく語られているのだが。

信康事件にも影響を与えたとされる秀忠の誕生であるが、森下脚本では、秀忠の母は単に「側室」というナレーションで名前も出ず、全くの「その他大勢」扱いであった。
のちの結城秀康の存在も全く無視で長丸(秀忠)が完全に次男と化していたのは、ツイッターとかでもつっこまれていたようだ。濃姫も徳姫も登場しないし。
でもこれは、井伊家と直接関わりがないところはカットという意識的な作業であろう。そのため、信康については、万千代が岡崎に長丸出生を知らせにいく等、苦労して繋がりをつけていたようだ。
井伊万千代と関係の深い徳川四天王はきっちりと描かれているが、榊原康政がかっこよすぎるゾ。とても兎忠と同一人物とは思えないじゃないか!

さて、今後の展開としては、おとわがメル友瀬名を助けようと画策するらしいというのは想定内だが、誰も予想しなかった氏真の登場! 家康からの(三ケ日みかんの絞り汁で書かれた♪)密書が氏真に! 森下脚本の超オリジナルパワーが炸裂だ。これはいったいどう動くのだ? 
山岡版と違い、今川と家康の間にはまだ絆が残っていて、三河勢は100%アンチ今川ではなかったという事のようだ。
それと事件の発端、もともとは、万千代が「寝所の手柄」がらみで、信康の臣下に武田の間者が入り込んでいたことをおおっぴらにしてしまったのが悲劇の始まりとなった?? これは森下脚本のうまいところで、視聴者は「何やってんだ万千代~~」となると共に、未熟者の万千代がこの悲劇を目の当たりにすることにより成長し、また家康と信長の関係が井伊と今川の関係と二重写しになっていくのを予想させる。更には将来的に家康と豊臣秀頼との関係にもだぶっていくのかもしれないが、その頃はもうおとわ=直虎は存在しないので、最終回のイベントが何なのかというのも期待させる所だ。

調べてみると、次郎法師直虎の没年は本能寺の変の年で、変の二か月後くらいに亡くなっているようだ。ということは、本能寺と続く伊賀越えが最終回だろうか。龍雲丸の再登場はあるのか、等など、最後まで予断を許さない展開のようだ。

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山岡荘八『徳川家康』の万千代と信康事件

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山岡荘八の「徳川家康」は、20年以上も前に読んだので、すっかり内容を忘れていますが、仰るように、築山殿が、ものすご~く嫌な女に描かれていたのが印象的で、それだけは覚えています。

「信康事件」は、ちかごろよく歴史番組などで「新説」が取り上げられているので、私も今年の大河はその路線でいくのかなと思っていましたが、従来通りでしたね。まあ、そのほうがドラマ性というか悲劇性があるかな…
そして、まさかの氏真登場!本当にどういう動きをするのでしょう?次回のお話で一番の楽しみなところです。

私も、最終回は伊賀越えだろうなと予想していますが(直政が無事に戻ってきて、よかった、よかったと喜ぶ)、本能寺の変の直前に家康一行は堺に行くはずだから、龍雲丸が再登場するならそこかな、と思っていたりします。

麦わらぼうし  2017/11/17 (Fri.) 21:36 edit

麦さま、いつも有難うございます。
明日の直虎で、信康事件の結末がどう描かれるのか楽しみです。
以前、関連本の一つでご紹介した梓澤要さんの『女にこそあれ次郎法師』では、次郎法師や傑山・晃天が瀬名を井伊谷で匿おうと本坂峠に向うが間に合わず、一瞬、湖の上の舟にいる瀬名と目を合わせながら別れ別れになるシーンがあります。とても映像的でいいと思うんですが、これが原作本というわけではないので、どうなるか。森下さんのオリジナルということでは氏真がメインになるんでしょうかね。

ところで、偶然発見したのですが、平岩先生の現代もの(といっても、もう30年以上前の作品ですが)、『女たちの家』という、奥浜名のペンションの話があるんですが、これに井伊家の菩提寺龍潭寺や、築山御前ゆかりの吐月峰柴屋寺などが出てくるんですね。重要な舞台というわけではなく、ちょこっと出てくるだけですけど、なんか嬉しいです。この時の浜名湖の取材が、『水鳥の関』につながったんでしょうかね。

ストファ管理人  2017/11/18 (Sat.) 08:23 edit