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新年が明けたと思ったら、あっという間に1月も後半になり(毎年そう言っているのだが、)大河ドラマ「おんな城主直虎」も3回が過ぎた。
初回の印象は、登場人物たちの動きよりも、風景がとても綺麗に撮影されていたこと。山水の美しさ、水の国井伊谷という雰囲気が伝わってくる所がとても良かった。

紅白も大河も、スマホでネットの反応を見ながら楽しむのが昨今の主流だとか、私はまだガラケー族なので、ドラマの反響もたまにPCでちょっと覗くだけだが、けっこう笑えるものが多い。
「井伊の首、みんな持ってって!」駿河太守@笑点司会者は、やっぱり言われているようだ。
一番笑えたのは「井伊谷を何とかすっぺ委員会」というキャプションでの杉本哲太さんと吹越満さんのツーショット写真@あまちゃん、そういえば漁協組合長も井伊家にいなかったか?

さて肝心の内容であるが、子役たちが頑張っているのは評価できるとしても、子供の頑張りに頼り過ぎている感じがある。NHKの倣いで致し方ないとはいえ、子供に振り回される大人の演技が大げさすぎるのは、朝ドラなら許容範囲でも大河では白ける事が多い。

昨日の3回目では、姫・亀・鶴の子役トリオに加えて瀬名姫(後の築山御前)と子供時代の氏真も登場した。家康も子役が出るのだろうか?
せっかく登場させるなら、長過ぎた蹴鞠シーンの時間を少し省いて、そのぶん瀬名姫の両親と井伊家の繋がりなども、初回からもっと詳しく説明しておいたほうが良いのにと思う。
それに、今川の圧力に対抗して独立を願う井伊家という構図はわかりやすいが、「真田丸」でさんざん、あっちについたりこっちについたり、裏切ったのがばれてもシラをきりとおす、みたいな攻防に慣らされて来た視聴者にとっては、単純過ぎるというか少し物足りない。謀反を疑われて謀殺される井伊家の親族が、史実では兄弟二人のところドラマは亀之丞の父一人に省略してしまったのは仕方がないとしても、かなり杜撰な謀反計画みたいだし、井伊家の人材がこんな調子ならば、今川家の傘下に入った方がむしろ、この先安全なんとちゃう?みたいな感想を持ってしまう(-_-)

下でご紹介する関連本でも描かれているように、当時のこの地域は今川&井伊だけでなく、武田・北条・織田等など込み入った絡み合いがあった訳で、そのあたり、子供たちに親とか和尚が説明する形などでもよいから、或はナレーションの元直弼(これは気の利いた配役、もしかして最終回に登場とか?)の説明であっても、複雑な背景をもうちょっと視聴者にも共有させておけば、今後の展開にもっと興味がわくのにと思う。
もう十年も前の大河になってしまうが、「風林火山」は、そのあたりが多少敷居の高い所もあったけれども、甲斐だけでなく信濃・越後・駿河など各地の勢力の腹の探り合い・攻防戦をじっくりと描いていて良かった。

さて今回の主人公、「女にこそあれ、井伊家惣領に生まれ候間、僧侶の名を兼て次郎法師とは是非無く、南渓和尚御付候名なり」と『井伊家伝記』に記された女領主井伊直虎。最近、男性であったという説も出てきたけれど、「井伊直虎」なる人物が男性であったとしても、次郎法師という僧侶の名を持つ女性領主が井伊谷をしばらく統治していたという事実は明らかであるらしい。戦国の世にこうした女性が存在したということは非常な興味をそそるけれども、史料が少ないため、長らく、知る人ぞ知る謎の存在であったようだ。

彼女を扱った小説は、探した限りでは下記の3点である。もちろん、他にもいろいろ出ているが、出版年の新しい大河ドラマ便乗本と思われるものは除く。この他に、津本陽が『獅子の系譜』という、井伊直政を主人公にした小説を書いているが、これは直政が家康家臣となってからの活躍を描いたもので、次郎法師については殆ど言及されていないようだ。

まず火坂雅志の『井伊の虎』(2013、初出は2012オール讀物)。これは家康周囲の人物たちについての伝記を集めた『常在戦場』の中の一短編だが、一番てっとりばやく概要がわかる。コンパクトでわかりやすい分、とくに作者の視点とか独自の思い入れというのはなく、台詞付きWikipediaみたいなもんである。はっきり言ってこの作者の場合、長編でもそういう感じのが多いが――というのは決して貶しているのでなく、某歴史小説大御所のように独自の歴史観を延々と述べる長大作がよいか、さっと読めて相応の基礎知識を得られ、解釈感想は読者の御自由というのがよいかという、全くの好みの問題。

梓澤要『女にこそあれ次郎法師』(2006、2004-5歴史読本連載)。この作者は1993年に歴史文学賞を受賞した『喜娘』を始め、古代・奈良・平安時代をテーマに数々の歴史小説を書いており、最近では戦国・江戸時代にも筆を伸ばしている。多くの登場人物それぞれのキャラが立っていて読みやすく面白い。

高殿円『剣と紅』(2012、2011-12別冊文藝春秋連載)。全く知らない作家で女性か男性かもわからなかったが、Wikiによれば、角川学園小説大賞奨励賞を受賞してデビュー、ファンタジー小説や漫画の原作なども書いている女流作家らしい。確かに表紙はそんな印象だが、内容はなかなか硬派な歴史小説だ。ヒロインが予知能力を有する女性として描かれている所などちょっとファンタジーぽいけど。全体のストーリーが、家康の小姓となった万千代(直政)が、主である家康に問われてマイライフを説明するという構成になっているのは良いアイデアで、ドラマでもこうした方法を取ればわかりやすかったかもしれない。

この三作品、ヒロインの名前は全部別々である。火坂作品では、どストレートに「直姫」。梓澤作品の「祐」はたぶん、次郎法師の尼としての別名「祐圓尼」からであろう。高殿作品では「香」で「かぐ」と読ませている。井伊家の伝説の井戸の傍に橘(かぐのみ)があったのが由来としている。
Wikiを見ると、生年・没年・幼名すべてわかっているのは亀之丞(後の井伊直親)だけなので、各作家も知恵を絞って名前をつけたようだ。以前に発表された作品とかぶってはパクりになってしまうし苦労する所に違いない。ドラマの「おとわ」は由来がわからないが、同じく幼名不明の小野政次が「鶴丸」なのは、亀に対して鶴という遊び心だろう。

年令も姫と鶴は没年しか史料がないらしいので、3人をほぼ同年齢の幼馴染とした設定も理解できるけれど、上記3冊では、姫と亀はほぼ同年だが小野家の鶴は年上で、もっと距離感のある関係に描かれている。
今後のキーパーソンはこの「鶴」かもしれない。現在、思いっきり悪役になっている父親の和泉守政直は間もなく病死してしまい、それをきっかけに亀之丞が戻ってくるという展開だが、そこで鶴丸(⇒政次)が氷のような悪役に変身するのか、それともヒロインへの恋心を隠しつつ、ハムレットのような悲劇の貴公子となるのか期待が持てる。高橋一生さんならどんなキャラでも達者に演じてくれそうなので楽しみだ。

今、同じ脚本家の「ごちそうさん」の再放送をやっていて、これから戦時中の話になっていく所だが、ヒロインが始めは国策に何ら疑問を持たない素直な「愛国婦人」だったのが、幼馴染の出征とトラウマを負っての帰還、更にはこんなに長引くと夢にも思わなかった戦況の中で、ついに自分の息子までも失い、その痛手に苦しみつつも、戦後をたくましく生き抜いていくという、その経過がなかなか良く書き込まれていたと記憶している。なので本作も安易な「戦はイヤ」の姫大河にはならないと確信するが、これからの大人パート、せっかく演技派の俳優さんたちが揃っているのだから、ぜひ見応えのあるドラマにしてほしいものである。

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直虎はじまる

Comments

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こちらでは初コメントです。遅ればせながらブログ開設おめでとうございます、さっそく楽しく拝見しております。

「直虎」、子役の子たちは演技うまいなぁと思うけど、今のところ可もなく不可もなく、といった感想です。第二話の「他の村と争いになった時に差し出すために生かされている流れ者」などの、あの時代らしいシビアなエピソードはおもしろいなと思いましたが。
「直虎」と「歴史秘話ヒストリア」や「英雄たちの選択」などの歴史番組でぐらいしか今年の大河の知識がないので、今後楽しみにはしています。たまこさまがおっしゃるように「安易な「戦はイヤ」の姫大河」にだけはしないでほしいですね。

麦わらぼうし  2017/01/26 (Thu.) 22:10 edit

麦さま、お寄りいただき有難うございます。
ムロツヨシさんは、「ごちそうさん」でも異色の脇役で登場していたので、「直虎」にも出るだろうなぁと思っていました。後に徳政令問題の時に暗躍する瀬戸方久、一代で成り上がり豪商となった人物ですね(もちろん、今まで全然知りませんでしたが)。『剣と紅』では、肥汲みの下人として登場し、その肥桶の中に亀之丞が隠れて脱出したことになっていました。今回の大河ではまた新しい解釈になっていて興味深かったです。
「ごちそうさん」メンバーでは財前直見さんがお母さん役で出ていますが、原田泰造さんやキムラ緑子さんにもワンポイントでいいから出てほしいです!
麦さまには清盛のブログもどきの時も、熱心に読んで頂いてよく感想などを頂戴して大変うれしく思っておりました。お忙しいと思いますが、またお気軽にいらっしゃって下さい。

ストファ管理人  2017/01/26 (Thu.) 23:18 edit