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桜も終わり、早くも季節は春から初夏へ。
この季節のお話というと、やっぱり『江戸の子守唄』ですね~
かわせみ物語全体がギュっと濃縮されたような名作です。
「はいくりんぐ」のお題になったときも、非常に盛り上がりました(七重ちゃん泣かないで!宗太郎さんがそこまで来ていますよ!!というエールが谺しておりました♪)し、これまでの掲示板でも何度となく話題になってきたので、東吾さん・おるいさん・七重さんの心模様や、ストーリー展開の妙については今さら触れる必要もないでしょう。

平岩先生はいくつかのエッセイで「かわせみ物語がこんなに長期化して、明治編まで突入せざるをえなくなってしまったのは、うっかり源太郎を誕生させてしまい、子供の成長に合せて時を進めなければならなくなったため」と書いておられ、その通りだろうとは思いますが、その前の段階での、「プレ長期化きっかけ作品」みたいなものとして、この『江戸の子守唄』もあるのじゃないかな~という気がします。
七重さんというキャラがここでハッキリ出てきていること。七重さんが単なるヒロインの引き立て役・敵役ではなく、おるいさんとは違うけれども、また別の魅力的な女性としてレギュラー入り、そしてそんな七重さんが不幸になってはならないと、後に宗太郎さんも登場(「やっぱり医者が一人いると何かと便利だし」という理由もあったそうです:笑)だんだん、群像劇として拡大されていった訳ですね。
もっとも、この時点では、作者のゴールは、二人の晴れて祝言あたりだったと思います。「もしかして明治以降も続くのでは」という、作者にとっても読者にとっても最初は冗談だったであろう話が現実になりました。まさに、小説の登場人物って作者の手を離れて活躍するのだなという経緯を読者は目の当たりにすることができたわけですね。

『江戸の子守唄』では、おるいさんのお買いものシーンも見どころの一つ。ここでお文ちゃんの身元が判明して、事件が急展開、解決に向かうわけですが、おるいさん達が訪れた「尾張町の蛭子屋」私の文庫版(1991年、20刷)では「ひるこや」とルビがふってあります。実在の店だったのだろうかと調べてみると、どうも「蛭子屋」と書いて「ゑびす屋」と読む店があったようです。
松坂屋のHP店の歴史を解説した「松坂屋「ひと・こと・もの」語り」のページで、八代将軍吉宗と幼馴染だった大坂の商人が、吉宗から贈られた蛭子(ゑびす)像にちなんでゑびす屋呉服店を開業、その後江戸にも進出して尾張町に店を出したとあり、蛭子像の写真も載っています。明治になってこの蛭子屋は松坂屋に吸収合併されたのだそうです。

広重の「名所江戸百景」には、大伝馬町の木綿店・駿河町の越後屋・下谷広小路の松坂屋・日本橋通町の白木屋などが描かれていますが、尾張町は、江戸百景ではなく、初期の作品「東都名所」のほうにありますね。(東都尾張町繁栄之図)
この図では「恵美壽屋」となっていて、恵比寿神を描いた暖簾が見えます。



このお話で事件解決の手がかりになる「紅花」には、作者の思い入れがあったようで、はやぶさ新八シリーズの奥州編でも「紅花染め秘帳」として登場しています。
登場人物も多く、入り組んだ人間関係がややこしくて、なかなか頭に入らないのですが、天領として代官支配を受けたり大名の藩となったりした山形の複雑な歴史的背景、産業にからむ幕閣・藩・商人の思惑などスケールの大きな、本来ならば御用旅シリーズ中でも最長編になりそうなところ、文庫200ページほどで、なんだかススス~と終わってしまったような、ちょっと物足りない印象です。誰か実力のある脚本家が、細部をじっくりねっちり膨らませて、NHK=BSとかで半年くらいかけて映像化しないかな~(もっともNHKさんも最近、経費節減のためか、有名作家+実力派脚本家っていう昔の大河ドラマパターンはいっこうにやろうとしませんね。オリジナル脚本ばっかり。)

紅花といえば、先月亡くなられた内田康夫さんの浅見シリーズにも『紅藍(くれない)の女殺人事件』という、紅花の名産地山形県河北町を舞台にした作品があります。「花いちもんめ」の童歌の「花」が実は紅花で、花一匁が金一匁といわれる高級品だった・・・
これはフジテレビの中村俊介@浅見バージョンで大河内奈々子・江波杏子・峰岸徹出演で映像化されているようですが、沢村一樹バージョンはないのかな?

最近では関東地方でも、桶川などで紅花を見ることができますが、やはり本家山形のは違うのでしょうか。一度見てみたいものです。

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かわせみ談話室 2018 4月

Comments

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Twitterも本格的に始められたとのこと、さすがです~。私はと言えばまだFacebook留まりで、InstagramもTwitterもできてません(涙)たまこさまの呟きが読めるなら始めてみようかな。旅先での実況呟きも楽しみだしなあ。ただ、おっしゃるとおり「いま何してる」がFacebookよりリアルタイムな感じがして躊躇しちゃうのです。Facebookはまだ「作品」みたいな感じで作り込みも(笑)可能じゃないですか(多少作り込みしてるって白状しちゃったわ)
それでもなかなか更新できなくて、たまに更新すると編集を繰り返したりして。結構頭の体操になります(笑)そろそろ作品展も近いし、何か書かなくちゃ。でもFacebookに載せるほどの作品もまだできてない…(涙)

「江戸の子守唄」懐かしいですね。ごくごくとおいしい水を飲み干すように、既刊を読破していた当時、本当に身体中に染みこませるようにお話に熱中していました。二人の仲もせつなかったしね。
蛭子屋←えびす屋も平岩先生の茶目っ気を感じて、興味深いお話ですね。先生もきっと勢いこんで色々なお遊びを散りばめて楽しんだのかも。比べるものではないと重々感じますが、文庫版の「千春の婚礼」を最近読んで、先生の、聞いてはいけない苦し気な息遣いを聞いてしまったような気がしました…
私だけの印象かもしれませんが、何だかとても心配になってしまいました。

ことのはをとつおいつ綯う卯月尽

はなはな  2018/04/30 (Mon.) 19:50 edit

たまこ様、ブログになってからも、かわせみに限らず、
お散歩便りとか、色々と楽しませてもらっております。当方、
ネットサーフィン覗き見専門から一向に進化せず、Twitterも
ハッシュタグも??のままで・・これは、むしろ退化してます(爆)

平岩先生のエッセイを少し前に読み返してみました・・
作品への(登場人物への)愛情が読み手にひしひしと伝わりますね。
かわせみのお話が無理なら、隼さんのお話でも良いから、先生の
新作が読みたいとの思いがまた強くなりました。
内田康夫さんの訃報のせいかもしれません。

改元へ カウントダウン 卯月尽

時代の変わり目まであと一年になるのですね。
たまこ様の会社を始め、印刷関連業界では、なるべく早めに
新元号を開示して欲しいところでしょうね・・平成時代は
昭和とはまた違う激動が色々あったように思います。震災や
津波、大雨、台風、竜巻などなど、平成の最後の一年が穏やかに
過ぎることを祈りたくなります。政界を先頭に、大人がもっと
凛とした姿を子供たちに示していかねばならないと、自分への
戒めも込めて感じるこの頃です。

すみれ  2018/04/30 (Mon.) 19:57 edit

はなはな様、すみれ様、いつも有難うございます。

私のイメージでは、逆に「Twitter留まり」で、Facebookはとてもとても、っていう感じです。我が社もFacebookも持ってるはずですが、ほとんど存在感がない(笑)というか、会社HPと重複してしまう感じがするんですよね。
ツイッターは、会社の公式アカウントと、社長・社員・私の個人アカウントがあって、公式は「○○が発売です!」みたいな、HPの記事の見出しにあたる感じです。個人アカウントのほうは、基本営業でも肉声が入るというか、「どんな人がこのマップを作ってるのかな」という気持ちにお応えする感じですかね。
「なう」のコンセプトに沿って、実況中継主体でツイートする人もいますし、私はほとんどスマホからは投稿せず(というか出来ず)、写真もPC上でトリミングや繋ぎとかしてから投稿するので、人によって使い方はいろいろだと思います。
兵庫県三田(さんだ)市の「能楽と郷土を知る会」という所がとても精力的にツイートなさっていて、毎日読むのも大変なのでいい加減に(笑)見ていますが勉強になります。三田は綾部と同じ九鬼家の藩だったので(江戸時代に兄弟喧嘩をして幕府に分家させられた)その関心もあって。

平成の次の元号、何だろうと興味ありますが、我が社では全部、西暦で処理しており、カレンダーとかは特に関係ないので大丈夫みたいです。でも手帳など作っている所は大変ですよね。
昭和・平成・○○、ついに「三代を生きた世代」になってしまうのか~(笑)

連休も早や半ばにて卯月尽

ストファ管理人  2018/04/30 (Mon.) 20:56 edit

かわせみを読み始めた頃、いわゆる「サザエさん」方式で、登場人物は年をとらず、るいさんたちは、いつまでも世を忍ぶ仲なんだろうなと思っていたので、るいさんたちが晴れて祝言を挙げたときは、うれしかったけど、ちょっとびっくりした記憶があります。

すみれさまが仰っている「ネットサーフィン覗き見専門」私も同じくです。まあ、無理してやる事でもないですしね。
スマホゲームは、ちょこっとだけやっています。基本プレイ無料なヤツで、あくまで無料の範囲でやっています。課金は絶対しないぞ!と決めています(←ただのケチともいう)

若い頃、生年月日を書く箇所には、上から明治・大正・昭和と印刷されていたものでしたが、そのうち、一番上が昭和となる日もやってくるんでしょうね~

麦わらぼうし  2018/04/30 (Mon.) 21:47 edit

かわせみのお江戸編は、色々な思い出と共に心の中に格納してあります。季節ごとにあんな事があったなぁと時々取り出して眺めたりします。

道真は天女を母とす卯月尽

GW前半に余呉湖に行って来ました。そこで知ったのですが、道真公はなんと滋賀県の余呉湖が出生地だという伝説があるそうです。水浴びをしていて衣をとられて帰れなくなった天女と余呉湖の太夫との子どもが道真公だとか。余呉湖にはいくつも天女伝説があって、興味深いです。

浅黄裏  2018/05/01 (Tue.) 01:09 edit