呉服・雲林院ともに二度目だが、あまりよく覚えていない(滝汗)。
月並能の番組にはシテの演者の弁が載っているのが嬉しい。
能「呉服」小書作物出 シテ(呉織/呉織の神霊)當山孝道
ツレ(綾織/綾織の神霊)佐野登
ワキ(当今の臣下)福王和幸
ワキヅレ(従者)村瀬提・村瀬慧
アイ(里人)高澤祐介
「演じるにあたって:脇能は謡が命。考えずに謡が出るように稽古して、よどみない華やかな呉服を舞いたいと思います」(當山孝道さん)
「呉服」は知らなければ「ごふく」と読んでしまうのが普通だが、お能の「呉服」は「くれは」である。PC入力で「くれは」と打つと「呉羽」しか出てこないが。摂津の呉服の里は現在の大阪府池田市だそうだが、呉服神社というのがあり、服飾業者がお参りに来るそうだ。
一昨年見た「呉服」は同じ宝生の五雲会だったが「作物出」ではなかったので、機織台は舞台に出なかった。角川本テキストでは小書「作物出」の説明がなく、機織台の写真が載っていたので不審に感じ「作り物が出ない。予算がないのか」と自分のメモにある(赤恥)。
綾織は漢織・穴織などと書かれることもあるようだ。
前シテ・ツレが袖無し割烹着というかワンピース型のエプロンみたいなのをつけているが、これは側次(そばつぎ)といって、これを着ていると唐人女性というお約束らしい。
狂言「文荷」 シテ(太郎冠者)三宅右近 (主人)三宅右矩 (次郎冠者)三宅近成
配役は番組に書いてなかったので推測である。父・長男・次男の三宅一家総出演。
破れた恋文を扇であおいで進ませるところが笑える。この恋文は女性でなく、稚児宛てのものらしい。LGBTなどというが日本の伝統ではごく普通のことだったのでは? 謡が「恋の重荷」だったことは後で調べてわかった。「恋の重荷」・「綾鼓」ともに未見なので機会があれば是非見たいと思っている。
能「雲林院」 シテ(老人/業平)金井雄資
ワキ(蘆屋の公光)森常好
ワキヅレ(従者)舘田善博・森常太郎
アイ(所の者)前田晃一
「演じるにあたって:あくまで品格高く瑞々しい流麗な舞が一曲の核をなす「貴公子の能」です。但し情緒一辺倒ではなく、一種貴種流離譚の香りを放てればと考えています」(金井雄資さん)
この曲は世阿弥自筆本といわれる古い形と、現行の曲とで後半が全く違うという珍しいものである。小学館テキストは現行曲で角川本はタイトルに「古形」と但し書つきで世阿弥自筆本に拠っている。古形ではなんと後シテは業平でなく、二条の后高子の兄で業平と対立する藤原基経だという。そして高子自身も登場するらしい。こっちのほうが現代劇的でリアルな感じがするのでこれが世阿弥作というのも意外だ。こちらも是非見たいものである。
伊勢物語については田辺聖子さんの解説本も集英社文庫から出ている。
同じ業平もの「杜若」と共通点がある。基本的にシテとワキのシンプルな曲だが、その割に長い。
今回の二曲、脇能と業平ものだったが、源平ものなどに比べると、やはり少しハードルが高い感じがする。
