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昨年の「真田丸」では、あっという間に終わってしまった関ヶ原というのが話題になったが、今年の桶狭間も、織田信長も出て来ず、定番の今川義元討死シーンも省略で終わった。主人公視点を中心にとらえ、いわゆる歴史的見せ場は作らないというのが、最近の大河ドラマのトレンドになりつつあるということか。
井伊家にとっては「おいしい仕事」になるはずだったのが、まさかの負け戦、それも当主が討死してしまうという悲劇に見舞われる。一方で、将来、主人公と深い関わりを持つ松平元康(徳川家康)は、まさかの展開に慌てたものの、結果的にはとんでもない幸運が転がり込んできたことに気づく…というのが前回の流れで、今回はそれに続いて、ようやく待ちに待った井伊家嫡男の誕生、しかしその直前に、生母の実父が不慮の死をとげ、またまた家中の火種がくすぶり始める。
月23日の記事に入れた井伊直虎本3冊では、直政(虎松)誕生がどのように書かれているか。
まず最もコンパクト版の火坂雅志『井伊の虎』を見ると、あれ?? 虎松は、井伊直親が井伊谷に帰参した時すでに生まれており、直親は妻子を連れて帰ったということになっている。そして生母の父、奥山朝利は「信濃との国ざかいに近い土豪」で、逃避行していた直親を匿い、自分の娘と娶わせた。奥山朝利が小野正次を襲って返り討ちとなる事件は、短編ということもあるのだろうが、完全にスルーされている。

他の2冊では、ドラマとほぼ同じ展開で、虎松誕生と奥山事件が描かれている。
ただ生母の名は「ひよ」(梓澤要『女にこそあれ次郎法師』)、「日夜」(高殿円『剣と紅』)で、Wikiでも「奥山ひよ」となっているので、ドラマの貫地谷しほりがなぜ違う名なのかは不明。
それはともかく、井伊直親は、逃避行中にも正室とは別の妻子(娘)があったというのは史実らしい。梓澤・高殿の両作品でも触れられている。ドラマでは省略なのか、それとも今後サプライズな登場予定になっているのかわからないが。
井伊谷関係の史料は最近までほとんど不明で、次郎法師についても謎が多いというのはよく言われているが、火坂作品は梓澤作品よりもずっと後に書かれているのに、なぜ逃避行中の隠し妻(?)を正室の奥山女にしてしまったのかわからない。井伊直政の生年が桶狭間の翌年の永禄四年(1561)というのは、いろいろな所に書かれていて定説だと思われるのだが。

さてドラマの方は、桶狭間で父を亡くした次郎法師の悲嘆、当主を失って混乱する井伊家、その中でようやく嫡子懐妊の喜び、といった流れはほぼ納得いく形で描かれていたが、奥山朝利の事件はどうも消化不良である。ドラマでは、奥山vs小野、一対一の個人的な事件として描かれていたが、先述の2作品(たぶん史実も)では、奥山が手勢を率いて小野を襲うが返り討ちに合うという、ミニ内乱のようなものだったらしい。
奥山朝利は多くの子を持ち、娘たちをそれぞれ、井伊家嫡男の直親・小野政次の弟玄蕃朝直(桶狭間で戦死)に嫁がせた。ドラマにはこの二人しか登場しないが、その他、中野直由・井伊谷三人衆の一人鈴木重時の室も奥山の娘である。
短いシーンではあったが、奥山がうまく立ち回り、あちこちに娘を縁づけて家中での存在感を強化しようとしているキャラは、よく出ていた。しかし、娘たちが姉妹であることが視聴者にはあまり印象づけられていない。中野直由はドラマに登場しているので、彼の妻である娘もちょっとでも登場すれば良かったのに(そもそも、せっかく浜松出身でもある筧利夫さんが演じているのに中野直由の存在感が薄すぎる!!坂本竜馬の用心棒を勤めた長州人を演じた時はワンポイント出演でも非常に印象的だったのに)

それだけ上手に立ち回っていた奥山が、なぜ急に小野政次(=鶴)を襲うような事になったのか。まぁこれは小説でも、充分に納得いくような描かれ方はされていないのだが、少なくとも、もう少し人間関係を先に丁寧に描いておいてほしかったと思う。最初の数回が、子役たちが良かったとはいえ、あまりにも鶴亀おとわのドリカム・グラフィティで終わってしまったので、鶴の弟もいきなり登場した感じだし、山口紗弥加が鶴の妻ではなく、戦死した弟の妻だというのも、何となくわかりにくかった。(そういえば、鶴はまだ結婚していないのか? Wikiでも妻については「不詳」となっているが…)

井伊家については、このようにやや描写が雑な所が目につくが、今後の期待は、徳川家康と、後の築山御前となる瀬名姫とその子供達の話である。こちらも悲劇的結末となるのはよく知られているが…ドラマでは、瀬名姫と次郎法師がメル友という設定になっているのも面白い。
家康の生母であるお大の方は登場するのだろうか、ぜひ登場して築山御前との嫁姑バトルを繰り広げて欲しいのだが。
あまりそちらが中心になると、井伊家の大河ドラマでなくなってしまうという懸念もあるが、築山御前の母はドラマにも登場している通り、井伊家の女性である。家康の長男信康が、この母方の血を引くことになるのも、井伊家的には重要な点である。
一般に歴史ドラマは、父系の血脈で語られるが、母系の流れを見るとまた違ったものが見えてくると、永井路子氏などがよく言われている。
井伊&徳川の今後の展開、次郎法師の「龍宮小僧」ぶりと共に期待したい。
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井伊直政誕生

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今年の大河については、ほとんど予備知識が無いので、「へえ~こんな事があったんだ~」と素直に見ていますが、いろいろ設定の違いがあるのですね。
私は小野政次役の高橋一生さんの演技がいいなと思います。いろいろ複雑な心情が伝わってきて。あと、阿部サダヲさんも。去年の内野さんとはまた違った初々しい家康がいいなと。初登場時には本当に十代の少年に見えましたもの。

ところで、私、今川氏真って、戦国大名としての今川氏が滅亡したあたりで死んだものと思っていましたが、なんと大阪の陣の頃まで生きていたんですね。そして子孫は高家として徳川幕府に仕え、明治の世で断絶するまで続いていたそうで。それを知って、あくまで天下人たる地位にこだわり、滅亡した豊臣と、メンツにこだわらず、長く続いた今川と、どちらがいいかは凡人の私にはわかりませんが、対照的だなと思いました。

麦わらぼうし  2017/03/18 (Sat.) 22:17 edit

麦さま、コメント有難うございます。
阿部サダヲさんの徳川家康は、配役発表を聞いた時は意外でしたが、家康の前半生にはピッタリだったかもしれませんね。「真田丸」では後半生だったので、良い対比です。そういえば再放送の「武田信玄」では、平成かわせみの東吾様、中村橋之助さん(今は芝翫?)が家康で、三方原で武田軍に散々な目に合わされ、敗け姿を絵に描かせるシーンをやっていました。

麦様のおっしゃる通り、豊臣秀頼や織田三法師などに比べると、今川氏真は評判は悪くても、本人的には幸福な(?)生涯だったのかもしれません。徳川政府は、あの手この手で大名たちの力を削ぐことに熱心でしたが、強烈な恨みは残さないように、昔の名家は高家として武力と切り離して取り立て、武田家臣団は八王子千人同心、北条の僧兵は大山御師など、マンパワーもうまく活用していたのは上手なやり方だったなぁと思います。こうした点、今の国際首脳にも見習ってほしいですよね~

ストファ管理人  2017/03/19 (Sun.) 10:25 edit